ブログ相談室

緑内障と内服薬,薬剤師さんからの質問

2006年11月27日

●●●●様:はじめまして!早速ですが,以下,@でお答えいたします.

Q.>吉野眼科クリニック 吉野健一 先生

吉野先生はじめまして。私は武蔵野市で薬剤師をしております●●と申します。突然のメールで失礼致します。日々患者さんと接している際、一つ疑問がありましたので差し支えなければ教えていただきたくメールいたしました。抗コリンを始めとして緑内障の患者に原則投与禁忌の医薬品は多種ありますが緑内障の患者さんに薬のことを伺うとほとんどが注意する薬について眼科の先生から説明は受けていません。例えばPL顆粒のような禁忌の風邪薬が処方された場合内科の先生に連絡して別の薬に変更をお願いしておりますが先生も慢性の緑内障はさほど問題ないと言っております。薬剤師の世界ですと緑内障と風邪薬は要注意が常識なのですが眼科医の先生の立場からですと薬との飲み合わせはどのくらい気をつけているのでしょうか?

@何故常識なのですか?その常識はどこから来たのでしょう.先輩が教えてくれたからでか?これでは,一対一のマルチプルチョイス試験には答えられますが,根拠を考えずに常識として無批判にその知識を頭に叩き込んでいたのでは,今回のような問題に直面した時の思考に膠着が生じますね.同じことがすべての世の中の事象に当てはまります.物事にはすべて根拠があるのです.それを考えるクセをつけることが大事です.

Q.> 薬剤師は薬の飲み合わせについて深く関与しない方が良いのでしょうか?薬剤師と医師との間にいつも温度差を感じてしまいます。

@そんな事は無いと思います.関与すべきと考えます.それによりドクターは救われることもあります.

Q.> 周りに懇意にしている眼科の先生がいなく一度専門家の意見を伺いたくネットで検索しているうちに先生のホームページにたどり着きました。差し支えなければお答えいただけると今後の患者さんへの対応にも参考になりますので助かります。よろしくお願いいたします。

@一言でお答えすることができます.その前に,「緑内障に対し禁忌となるお薬があるのは何故だろう?」「どんなメカニズム(薬理作用)が禁忌となる根拠なのだろう?」といったことをお考えになったことはありますか?それが勉強です.しかし,まず疑問を持ったということは立派だと思います.疑問があって,勉強があるのですから.この勉強を人に聞くのではなく自分でできたらすばらしいのですが.....さて,緑内障には開放隅角緑内障(含む正常眼圧緑内障)と閉塞隅角緑内障があります(詳しくは成書を読んでください).後者は散瞳することにより急性緑内障発作を起こしますので,散瞳作用のあるお薬は禁忌です.前者に対しては問題ありません.従って,そのようなお薬を処方する際,または、服用指導や処方チェックをするときは単に緑内障にはすべて禁忌(原則禁忌)と考えるのではなく,どのタイプの緑内障なのかを知る必要があります.眼科医との間の温度差は,眼科医からしてみれば,何でもかんでもメカニズムも知らずに「緑内障なので禁忌ですか?」といった無見識な質問に嫌気がさした.といったことももしかしたらあるのかもしれません.普通の眼科医ならば閉塞隅角緑内障に散瞳したら発作を起こして大変なことになる.ということは,それこそ常識として知っているはずです.もし知らなかったら相当なヤブか眼科医ではありません.ただ,今服用している,または服用するであろう薬,しかもそれが他医による処方の場合,その薬に「散瞳作用」があるかどうかを一々チェックしたり,その薬理作用をすべて知っておくということは,現実的には無理と思います.むしろ,それに対して注意を喚起するのが薬剤師の仕事だと私は考えますが如何でしょうか?従って,できる薬剤師の,「注意を喚起する仕方」としては,「この患者さんには緑内障の既往歴がありますが,服用なさるお薬には散瞳作用があります.この緑内障は開放隅角ですか?閉塞隅角ですか?」と聞くことです.そうすれば,「おぉ~!こいつは知っている!!できる!!」ということになるでしょう.これで温度差も縮まりますね!聞き方にもよると思いますが,もし,「そんな質問をする薬剤師は生意気だ!」なんて言う医者がいたら(こういう医者は案外多いようにも思いますが,そしてそういう輩程実力の無い医者であることが多いのですが),そいつは傲慢なだけでアカデミックな人間ではないということで心の中で思いっきりバカにしてやりましょうね.では,お仕事頑張ってください.吉野拝

吉野先生:正直見知らぬ方に教えてくださいとメールを送るのはいかがなものか?と思い、もしかしたらお叱りの返信が来るのではないかと思っていました。丁寧に回答くださりありがとうございます。「物事にはすべて根拠があるのです.それを考えるクセをつけることが大事です。」→先生のこの言葉が印象に残ります。緑内障というよりも仕事に対する姿勢を問いただしてくれたお返事でした。今回は本当にありがとうございました。先生も非常に忙しそうですがお体に気をつけて下さい。

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東京歯科大学眼科講師 日本医科大学眼科講師

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