ブログ相談室

甲状腺眼症について

2007年12月24日

●●● ●●●●●様:

メールが紛れてしまい御返事大変遅れすいませんでした.以下@でお答えします.

>> お名前 = ●●● ●●●●●

>> 都道府県 = アメリカ

>> email = ●●●@hotmail.com

>> 性別 = 女性

>> 年代1 = 40代前半

>> 内容 =今日初めて先生のHPを拝見しました。来週より日本に里帰りするので、場合によってはその時に診察して頂ければ嬉しく思います。今年の4月からの症状を書きますので、どうぞアドバイスお願い致します。

>> 4月 起き上がるのも辛いほど体調が悪くなり、血液検査をしたところ甲状腺機能低下症と診断され、チラージン50・1錠を服用しはじめました。(現在体調は少しよくなり血液検査の結果も安定しています)

>> 5月中旬 左目瞼に強い違和感を覚え、瞼が吊ってめくれ上がってきました。強い不快感と共に目の周りや頬にも痛みが出てきました。眼科で診察を受けたところ、甲状腺眼症ではないかということで経過をみることになりました。

>> 5月下旬 軽い複視が出てきました。両目を大きく見開くと複視はないのですが、眼を細めると物が上下にダブって見えます。たまに北北東の方向などと、違った方向にダブって見えることもあります。

@甲状腺眼症の一症状としてメビウス症候Moebius症候,Moebius’s symptomというのがあります.甲状腺眼症では輻輳(近くを見るときに左右の眼を中央に寄せることの)不全があります。この場合、近くを見ればものが二重に見えるといったものです.

>> 病院では特に検査していません。また以前に比べて光がまぶしくなったのでサングラスを使うことが多くなりました。

>> 7月 ドライアイが始まり、CMC0.5%と1%の点眼液(防腐剤なし)、睡眠前に眼軟膏を使い始めました。起床時に手のこわばりを感じる日が出てきました。毎日ではなく波があるようです。

@関節リウマチ(Arthritis Rheumatism)を合併しているのかも知れません.

>> 9月上旬 ドライアイがますます強くなり、一日に15回程点眼液を使っていたのですが、眼が乾きすぎて痛い為、涙点プラグを下にいれました。点眼液を使いすぎだったせいもあるかも知れませんが、強い痛みで辛かったのです。

@シェーグレン症候群を合併している可能性があります.関節リウマチの25%にシェーグレン症候群が合併するといわれています.この場合このシェーグレン症候群を続発性シェーグレン症候群(2ndary SS, 2°SS)と呼びます.

>> 9月下旬 涙点プラグの効果がでないので上にも涙点プラグを入れました。やっとドライアイの強烈な痛みから少しだけ解放されましたが、涙がたまりやすいせいか目ヤニがすぐについてしまいます。また気温や風のせいか涙がたまっている時もあれば乾燥して辛いときもあります。乾燥した目のため、またたまって濃くなった涙を洗い流す意味で、点眼液は1日10回弱使用しています。使いすぎでしょうか? でもなんだかたまった涙が濃くなって澱んでいる感じがするのです。眼軟膏の使用も続けていますが、相変わらず起床時は目が痛いです。

@ドライアイの患者さんの涙液の浸透圧は高いですので低調性(浸透圧の低い)の点眼液がよいようです.

>> 涙の分泌量 シルマー試験で3でした。この時既に下にプラグが入っていたのですがこれは関係ないのでしょうか?

@むしろ,涙点プラグが入っているのにシルマー値が3というのは相当涙液分泌量が少ないということがいえます.

>> リウマチ因子 3年ほど前にスポーツで膝を壊して関節ねずみの手術をしました。半月板にもヒビが入っていますが、こちらは手術をしていません。先日膝の痛みが酷いのでレントゲンを撮ると軽い関節炎でした。甲状腺の血液検査の数値は安定していますが体調はあまり良くなく、また手のこわばりがあり、そして祖母がリウマチだったので、念のためリウマチ因子の検査をしましたが陰性でした。

@てっきりRAだと思ったのですが,そういえば当院でも他院で行ったリウマチ関連の検査が陰性だったとのことが,当院で再度同様の検査を行ったら確実に陽性だったということがあったのを思い出しました.何が原因かは不明ですが....(まさか検体の取り扱いミスということではないと思うのですが....不思議です.)

>> シェーグレン症候群 ドライアイ、手のこわばり、皮膚・髪・鼻の中の乾燥などが気になり、念のため血液検査をしましたが陰性でした。この乾燥は甲状腺機能低下症から来ているのかも知れません。

@確かに典型例ではないようです.何らかの自己免疫疾患が基礎にあるように思います.

>> 最近になって担当医は甲状腺眼症ではないと思う、でも何が理由で目の形が変わったのか、また涙の分泌量が少ないのかはわからないと言いました。シェーグレン症候群の血液検査の結果も100%ではないので様子をみましょうという事でした。効果が出るかも知れないということでRestasisを処方され、一日2回使っています。

@日本ではこの免疫抑制剤(サイクロスオポリン)のドライアイの適応は厚労省で未承認ですが,理論的には効果があるかもしれませんね.

>> 左目の周りの痛みや不快感は少なくなりましたが、瞼は相変わらず吊ってめくれ上がった状態です。左目と右目の形は明らかに違います。笑って目を細めても左目は見開いた状態です。眠くなって右目の瞼が落ちてきても左目の瞼はあまり落ちません。突眼は今のところないようですが、触った感じ左目の周りは明らかに腫れています。

@眼球突出は無いのですよねぇ~?これだけを聞けば甲状腺眼症による眼球突出による瞼の後退(ダルリンプル症候 Dalrymple’s sign)ということになりますが....甲状腺眼症では、甲状腺 ホルモンの値が高いことが必ずしも直接の原因ではなく、甲状腺を攻撃する自己抗体の存在が重要な要素ですから、甲状腺眼症の甲状腺機能は高くても、低くても、また正常でもよいのです。何をもって甲状腺眼症ではないということになったのでしょうか?甲状腺疾患の診断のための採血検査では甲状腺ホルモンであるFT3,FT4などの測定が行われますが、最近では甲状腺ホルモン値が正常な正甲状腺グレービス病euthyroid graves diseaseが注目されています。これは、Basedow病特有の眼症状を 有しながらその他の眼科的疾患が除外され、血中の甲状腺ホルモン( FT3, FT4 )は正常な状態です。その診断には更に甲状腺関連抗体などの検査が必要ですが、特にその中でも甲状腺受容体抗体TRAbのうちの刺激抗体部分である甲状腺刺激抗体(TSAb)はこの疾患での陽性率が80%と高く、その診断での有効性が指摘されています。

>> もともと奥二重の腫れぼったい目ですが、左目のほうは瞼がめくれ上がったせいでまつ毛の生え際が見えます。これは自然に治ることはないだろうと言われましたが(手術をすることは可能と言われました)、理由がよくわからずこういう状態になる人は多いのでしょうか? またこの瞼がつった状態は手術以外では一生治らないのでしょうか?

@これはまさに「ダルリンプル症候」ですよねぇ~.

>> シェーグレン症候群の検査は血液検査とシルマー試験だけしかしていませんが、血液検査が陰性だった場合他の検査は必要ないでしょうか? またもし念のためした方が良い場合は検査結果が出るまでそのくらいの時間を要しますか?

@眼球表面の乾燥による障害=乾性角結膜炎(フルオレセイン生体染色,ローズベンガルまたはリサミングリーン生体染色)がシェーグレン症候群の診断に重要な他の検査項目です.これは眼科で診察時即できる検査です.

>> 手のこわばりは相変わらずありますが、内科の担当医曰く変形性関節症だろうとの事です。ちなみに手のこわばりは左手(薬指を痛めていますがレントゲンの結果問題はありませんでした)だけの場合と両手一緒に出る場合があります。普段痛みがない右手も一緒にこわばるのが不思議な感じです。

>> 長文となってしまい申し訳ありません。ご存知のようにこちらでは保険の関係で医師を選ぶのも難しく苦労しております。里帰りの機会に! と考えておりますので、どうぞよろしくお願いします。

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東京歯科大学眼科講師 日本医科大学眼科講師

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