視力回復手術(屈折矯正手術)において、現在最も多く行われているのがレーシック(LASIK)と呼ばれる術式です。 レーシックでは、角膜(かくまく)にフラップを作成し、エキシマレーザーを照射します。レーザー照射時間は30〜60秒程度です。フラップを元に戻して手術は終了します。フラップは自然に接着しますので、糸などで縫ったりしません。
レーシック手術の流れ
1)点眼麻酔を行います。
2)まぶたを開いて固定します。
フラップを作成するための吸引リングを眼球に密着します。多少の圧迫感を感じ視界が暗くなります。 麻酔がきいているので、乾燥感や痛みはほとんど感じません。
3)角膜フラップを作成します。
通常当院で行っているイントラレーシックでは、フェムトセカンドレーザーという最新鋭のレーザーで、角膜フラップを作成するため、フラップ作成時のトラブルは皆無といえます。極めて正確な厚さで安定したフラップが安全に作成できます。 詳しいフェムトセカンドレーザーの説明はこちらをご参照ください。
4)アイトラッカーで瞳孔と虹彩紋裡を認識
睫毛が邪魔にならないようにシールでカバーしてから、特殊な器具で眼をつぶらないように固定します瞼を開きます。 当院のエキシマレーザーは、手術中に目が動いてもレーザーの照射がずれないように、瞳孔中心と虹彩の模様を認識し、たとえ目が動いてもその目の動きに合わせてレーザーが眼球を追尾(ロックオン)する、アクティブアイトラッカー機能を有しています。
5)フラップをめくります。
フラップができたら、この下にエキシマレーザーを照射します。赤い点滅ランプを見るようにします。 しかし、たとえ目が動いても、前述のアクティブアイトラッカーシステムによりレーザーの照射ずれはおきません。
5)エキシマレーザーを照射します
フラップができたら、この下にエキシマレーザーを照射します。赤い点滅ランプを見るようにします。 しかし、たとえ目が動いても、前述のアクティブアイトラッカーシステムによりレーザーの照射ずれはおきません。
6)フラップを戻して終了です。
フラップを元の位置に戻し、軽くフラップ下を洗浄します。フラップは糸などでとめません。 フェムトセカンドレーザーにより作成されたフラップはそのエッジにある一定の角度を有していますので、非常に接着能が高くなっています。自然に接着しますので「まばたき」をしても大丈夫です。時に、度無しのコンタクトレンズを装用して手術を終える場合もあります。 手術は両眼20分で終了します。
- エキシマレーザーに何か副作用はありませんか?
- エキシマレーザーは、熱変性(やけど)を起こすことなしに、正確に生体組織の切除や切開が可能で、他の周辺組織に影響を与えることはありません。エキシマレーザーは、角膜混濁などの治療にも応用されている人体に優しいレーザーで、副作用はありません。
比較的生じやすい合併症
グレア・ハロー(夜間の見え方)
夜間、ネオンや信号、車のヘッドライトがにじむ症状をグレア・ハロー(図1)と呼びます。図2は、目の写真ですが、円状の黒い部分は瞳孔、青い部分がレーザー照射で矯正された部分です。 グレア・ハロは、レーザーを照射した部分と、そうでない部分とで光りが乱屈折することで起こります。元々の瞳孔径が大きい人ほど、「グレア・ハロ」を感じる傾向があります。 しかし、手術直後は強く感じるグレア・ハロの症状も、フラップが密着するにしたがい、徐々に数か月で気にならなくなる方がほとんどです。
手術後のドライアイ
手術の影響で、数日から数ヵ月、目が乾く症状が続く場合があります。術前からドライアイ傾向のある方は尚更です。必要に応じて、点眼薬や涙点プラグ等、ドライアイの治療を行います。
術後ドライアイの治療に関して、当院では、オキュラーサーフェスを専門にしている当院ならではのノウハウがあります。
近視や乱視が強い方に起こりうる近視の戻り
特に近視、乱視が強い方は、手術後から3ヶ月ぐらいまでに視力が近視よりに戻る場合があります。 万一、近視の戻りが生じた場合は、ご希望により、追加矯正手術を行う場合があります。当院の追加矯正の割合は、3.5%です。
合併症の可能性を軽減する当院導入のフェムトセカンドレーザーによる効果について
術中フラップ作成時における問題と改善
マイクロケラトームという電動メスを用いて角膜フラップを作る際には、薄すぎたり、厚すぎたり、亀裂が入ってしまうことがありました。 しかし、現在、当院に導入されているフェムトセカンドレーザーでは、マイクロケラトームのような器具を角膜にこすりつけながら切開を行うのではなく、レーザーにより角膜実質を面で切開するため、角膜フラップ作成時におけるトラブルは皆無、かつ極めて正確な厚さと形で作成することが可能となりました。
フラップ下への細胞の迷入(Epithelial ingrowth)予防と感染症のリスクが軽減
フェムトセカンドレーザーによるフラップ作成は、従来のマイクロケラトームと異なり、フラップエッジ(フラップの縁)の厚さが薄くなく、ある一定の角度をもって作成できるため、フラップ下へ細胞が入り込む厄介な合併症(epithelial imgrowth)が極めて少なくなりました。また、マイクロケラトームというメスを使用しないため、銀座眼科の感染症多発事件のごとく、器具を介して細菌がフラップ下に感染することもありません。
これらに加え、当院における手術室のヘパフィルターを用いたクリーン化(ヘパフィルターを用いた技術)、症例毎の使用器具の減菌、使い捨て(ディスポ)器具の使用等により、当院ではこれまで感染症の発生は「0(ゼロ)」となっています。
当院手術室の空調クリーンフィルター設備について
当院に導入している空調設備は、細菌・カビ・ウィルスを破壊するフィルタを利用し、極めて清潔な手術環境となるよう努めています。 洗浄度や浮遊微生物数管理も要求されるバイオクリーンルームにも利用されている殺菌酵素HEPA(High Efficiency Paticulate Air)フィルターを利用しています。これによりフィルタ内で捕集した微生物による2次感染を防ぎ、よりクリーンな環境を実現してます。
このHEPAフィルタの能力を出し切るため、当院では、業界トップクラスの洗浄度を誇り、空気漏れを許さない空調設備を導入し、この空調管理(温度、湿度、空気正常機能)を手術を行わない日であっても、24時間、365日フル回転で行っています。通常のエアコン管理の手術室とは、根本的にその清潔度、レーザー機能の安定性に差があります。
上記の取り組みは、あくまで施設内部における対策で、通常、その取り組みは表に現れ、直接患者さんが見ることはできない努力です。しかし、余裕があれば、手術室のベットに横たわった時に天井を見たら、下記のような空調フィルター装置を見ることができます。
その他、ごく稀に起こりうる合併症について
DLK(Diffuse Lameller keraitis)
ごく希に、原因不明の角膜フラップ下の炎症が生じることがあります。レーザーそのものによる刺激や、死滅細菌の内毒素がその可能性としていわれていますが、詳細は明らかになっていません。
点眼液の変更や、結膜(白目)下への薬剤注入、角膜フラップ下の再洗浄、内服薬の使用により解決します。当院での発症は10年以上前に、5例を下回る発症のみとなっています。